
平成21年10月9日
田辺 昭人
10月8日・9日
熊本市 崇城大学市民ホール
全国市長会、財団法人東京市政調査会、財団法人日本都市センター、および開催地である熊本市の主催により開催。協賛は財団法人全国市長会である。
メインテーマは、「人口減少社会の都市経営」、サブテーマとして、人・まち・環境 持続可能な社会への転換に向けてである。
まず、基調講演として「人口減少時代の都市経営」が行われた。
東京大学 大西隆教授
時代と共に、都市人口のシェアは変化している。1950年代では、全世界の35パーセントを占めていたヨーロッパの人口は、2000年代となって18パーセントと減少傾向となった。また総人口も減少傾向にある。そのなかでアジア地域のシェアは増加しており、特にインドの台頭は著しいものがある。
一方、国内における都市傾向は、世界傾向と同様で今後の課題は、いかに効率性の高い、住みやすい「まちづくり」を構築するかということである。
高度成長のなかで、人口の増加と共に郊外化してきた居住地域は、少子高齢化という人口減少の中で今後、効率性の高い都市居住へと変化が求められる。
「人口減少時代」を迎え、今後持続可能な都市経営に必要とされるテーマは、
1. 低炭素都市づくり
2. 交通手段を生かしたコンパクト+拡散型都市のマネジメント
3. 中心市街地の活性化とコンパクト+拡散型都市のマネジメント
4. 中心と郊外の衝平
5. 経済基盤論による都市の経済成長戦略
である。これら各テーマは、以下の内容に対し共通のテーマとなっている。
富山市の実例に見られるように、拡散型都市への軸を構成するのは、交通網である。富山市の場合はLRTにより、拠点を結ぶ。
そして、拠点の駅を核に道路整備や駐車場整備を行い、パークアンドライド方式を構築する手法がとられている。この方式は、富山市以外にもその地域性を生かして、宇都宮市・熊本市でも同様である。
私は、昨年の建設常任委員会の視察において、富山市の実情を見てきた際、この「交通手段を利用のコンパクト+拡散型都市」の構想は、本市にまさに適していると感じた。
また、「低炭素都市づくり」が、これからの都市経営にとって重要なキーワードになってくるのではないだろうか。大西教授も今後、都市再開発にあたりCO2排出抑制が地区計画に反映されるようになるだろうとの話であった。また将来、法的にも盛り込まれていくとの見解を示した。
次に、幸山政史熊本市長から、熊本市の特性に沿った「人口減社会を見据えた都市づくり」についての講演があった。熊本市は阿蘇の伏流水を源とする地下水を題材に「日本一の地下水都市熊本」を目指し、将来にわたり豊富で良質な地下水を育むために、水田を利用した湛水事業や市民一丸となっての節水事業、水質保全対策などに取り組んでいる。
また、熊本の歴史的ランドマークといえる「熊本城」の復元への取り組みが進んでおり、完成を見た「本丸御殿」に続き、今後も長期的視点を持って往時の熊本城の姿に復元していく計画がある。その復元費用を市民から寄付していただくため、「一国城主」の制度を設けていることは、画期的なことと思えた。
そのほか、活力を求めるための手段として、社会資本の有効活用や適正配置などの推進、市民参画と協働を基にまちづくりを進めている。
環境問題については、低炭素社会の実現に向けた取り組みを展開し、環境省が推奨する環境モデル都市の指定を目指している。
そして、交流人口を増やしていくために、都市ブランド戦略とアジア戦略を推進している。積極的な情報発信・事業展開などさまざまな媒体や資源を活用する姿勢には、強い共感を覚えた。
次に、長野県は小布施町から、セーラ・マリ・カミングスさんの講演を聴く。
氏は外国人でありながら、留学を機に来日、その後日本の文化に触れて就職し現在は、地元の酒造場企業の代表を務めている。
その経歴だけでも十分驚いたが、さらには町おこしの運動に積極的に取り組んでこられたそうである。氏の積極的なシティセールスに対する思いは強く、当初反対した人々も次第に協力してくれるように変化した。その活力の原点は、「やれることから、実現していく」この実践であった。
例えば、地元にゆかりのある葛飾北斎が諸外国でも高い評価を得ていることから、4年ごとに開催されていた「国際北斎会議」を小布施町という小さな町で開催できるように奔走し、開催にこぎつけたこと、また小布施町の良さを知ってもらうため企画した「小布施見にマラソン」では、コースの設定を敢えて整備された道路だけではなく、路地裏やデコボコの野道や土手と変化に富み、町を肌で感じ取れる、参加者が楽しめるようにした。
大企業の支援や行政からの助成もない、町民有志の実行委員会と多くのボランティアに支えられた手作りイベントである。
その成功は、氏が熱く語る「一期一会」の精神と既存の資産を活かす意味での多角的なコラボレートの成果と考える。
今回の講演の中で、ある意味一番のインパクトがあったのは氏の講演であった。
続いて、大阪府池田市長の倉田薫氏の講演も大変興味深いものだった。
若くして市会議員となり、その後市長に転進され現在4期目とのことである。
氏の施策は大変ユニークで面白く、興味を持って拝聴した。
池田市では、「自分たちの町は自分たちで作る」という地方分権改革の理念と近接性の原理に基づいて、それぞれの自治体が地域住民と協働して地域の魅力を高める特色ある街づくりを行うことが重要としている。
地域分権条例を制定して、条例に基づく小学校区別のコミュニティ推進協議会を11小学校区全てに発足させ、住民税総額の1%を11小学校区に按分し、市民が予算編成要望権を持って自分たちの納めた税の使途に具体的に関与できる制度である。いわば、市民が税の支配権を持つということである。
ギブアンドテイクといっても良いと思うが、市民は「権利を有すると同時に、義務をも持つ」ことになる。
地域での要望は、按分され予算の中で処置されると同時に、その過程での進め方や交渉等も市民サイドで行われることになり、その意味では行政の負担は軽減されることになる。池田市ではこの制度を進めながら、試行錯誤とは言いつつも、将来はもっと大きな予算処置にしたいと考えているそうである。
地方分権から地域分権が、コンパクトな魅力ある町を目指す池田市の施策である。
次に、熊本大学教授の上野眞也氏から「持続可能なコミュニティ再生の課題」との講演があった。
かつて都市部への人口流入とその移動による流出は、過疎と過密の問題を引き起こしたが、今や都市部における少子高齢化の影響による限界化やコミュニティ機能の衰退が見られる。その理由として、生活環境の変化は地域だけでなく、家庭の機能も外部化するなどがあげられる。保育やコンビニ、外食産業の普及が一気に発展してきたことは、これまで地域的なつながりが大きく作用していた生活の形態を変化させた。生活だけでなく、遊びの形態も変わったといえる。
世代間のライフスタイルや価値観は明らかに異なるといえよう。
このように変化してきた現代社会が提供する高度なサービスは、個々が役務を提供し、旧来の支えあう社会の仕組みを不要なものにした。
その希薄な人間関係は、PTAの衰退や地域とのかかわりとして、信頼感が低下している現象と一致するものである。
氏は、高齢化社会ではコミュニティの強弱が生き辛さを和らげ、最後の安全保障になる可能性を説いている。地域や家庭内のコミュニケーションの活性化と役割分担を促進することとして、24時間営業のコンビニや深夜放送の取り止めを例に挙げていたが、私は現実としては困難と考える。
防災訓練等の行事参加率を見ると、確かに固定化、高齢化がみられる。
しかし、一方地域によっては多くの世代の参加が見られる地域があることも事実である。その原因としては、地域における日ごろの活動、例えば祭礼、文化祭、敬老会、バーベキューといった広い世代にわたるイベントの開催というのもひとつではないだろうか。
昨今の当票率の低下や政治に対する無関心にも通じることではないか。
翌日のパネルディスカッションでは、パネラーのひとりである栃木県宇都宮市長の佐藤栄一氏の話が印象深かった。
宇都宮といえば、「餃子のまち」とのイメージがわくくらい、マスコミにも頻繁に取り上げられ定着している。関東平野の北部に位置し、農業・商業・工業とそれぞれのバランスが高いレベルでとれていることは、私からすればうらやましい限りである。その宇都宮市でも、平成27年をピークにその後、人口減少に転じ、平成34年には、ほぼ4人にひとりが高齢者になると見込まれている。
この点においても、現在本市では、既に4.2人にひとりが高齢者ということから考えると、大変若い町だといえる。
しかし、佐藤市長は今から、将来にわたり、持続的に発展していくための長期的視点のもと、都市空間のあり方を見直していくことをテーマに掲げることにした。そこで打ち出したのが、ネットワーク型コンパクトシティ構想である。
このネットワーク型コンパクトシティは、「土地利用の適正化」「拠点化の促進」「ネットワーク化の促進」を形成することで、具体には、中心市街地の活力を高める再開発事業、広域的な交流・連携を担うJR宇都宮駅周辺の整備、都市内・都市間の交通を担う在来線駅周辺の整備、産業拠点の基盤整備などの推進としている。
また、五つの改革を示し、
1.「教育分野」の改革
2.「環境分野」の改革
3.「交通分野」の改革
4.「農業分野」の改革
5.「行財政」の改革
以上の改革について、具体的に述べられる姿に好感を持つと同時に、市長がこれまで経済人として培った経営感覚をいかし、都市経営に当たることの実感を持つことができた。
2日にわたる会議に、初めて参加したわけであるが、正直参加してよかったと思っている。
特に、人口減少社会における都市の未来像を描くにあたって、前述された事柄は共通の問題といえる。本市においても京急の路線を基軸に沿線のまちづくりや、中核駅までのアクセス整備・改善を図ることは、まさに「コンパクトシティ+拡散型都市」の構想にマッチするものと考える。
さらには、来年10月の羽田空港の拡張に伴う国内唯一のハブ空港化は、新政権の下、クローズアップされることから、本市にとっても非常に有効な影響を及ぼすことになるだろう。
一方、懸念するのは「まちなか居住」が進むことで将来、辺鄙な場所と言われる場所が淘汰されたり、置き去りにされないかということである。
いずれにしても、都市の将来像へのグランドデザインとして、こうした取り組みが大変重要であることを痛感した次第である。
